ウイニングラン −G.S.M. ナムコ2−

ナムコといえば、昔からゲームミュージックと縁の深い会社で、世界初のゲームミュージックアルバムが出たのもナムコですし(あの細野晴臣氏が監修で、ゼビウスなどを収録した「VIDEO GAME MUSIC」。今はサイトロンレーベルで再販されています)、その独特な音色とポップなメロディでファンが多いナムコPSGももちろんナムコの仕業ですし、ゲームミュージック界に燦然と名を残す名曲「ドラゴンスピリット」もナムコの作品ですし、ゲームミュージック界にハウスやテクノなどのクラブミュージックを本格的に持ち込んだ「F/A」「リッジレーサー」もナムコの作品でした。 ついでに、もうすぐナムコット時代のファミコン音源を収録したミュージックDVDも発売されます。(私も収録に関わってる非常に濃いぃ作品になってますので、皆様是非お買い求めください^^)
そんなわけで、ナムコゲームミュージックアルバムも、ゲームミュージック創世記の頃から幾度と無く発売されてます。 ナムコのアルバムといえば、ビクター音楽産業(現ビクターエンターテインメント?)から出ていた「ビデオゲームグラフィティ」「ゲームサウンドエクスプレス」シリーズが有名ですが、(あまり知られてない気がするんですが)実は旧サイトロンレーベルからアルバム3枚、マキシシングル2枚(だと思う)が出てました。 今回ご紹介するのは、そのアルバムの2枚目にあたるものです。
ウイニングラン」がタイトルになってますが、実はそのカップリングのほうが凄いというアルバムだったりします。(恐らく、セールスの関係で知名度が一番高いタイトルを全面に押し出した為でしょう) 収録タイトルは、「ウイニングラン(オリジナル/アレンジ)」「メタルホーク(オリジナル)」「スプラッターハウス(オリジナル/アレンジ)」となってます。 お気に入りのアルバムなので、今回は各タイトルをレビュー。
まずは「ウイニングラン」のアレンジバージョンから。 まだポリゴンが一般化する以前に、フルポリゴンのレースゲームに挑んだ意欲的作品でした。 なんか、実際にプレイすると処理速度の関係でスピード感が無く、ゲームとしては私にはイマイチだった気がします。(^^;) 元々ウイニングラン自体の曲数が少ないため、アレンジはほぼ「THEME OF WINNING RUN」1曲に絞ったものになってます。 この頃のナムコ楽曲のアレンジバージョンはどれも質が高いことで有名で、このアルバムでも非常に完成度の高いアレンジを聴かせてくれます。 原曲のイメージを踏襲しつつも、躍動感あふれるギターが非常にいいアクセントとなっていて、爽快感溢れるフュージョンサウンドに仕上がってます。
続いて「スプラッターハウス」のアレンジバージョン。 個人的には、ナムコアレンジ物の中でも5本指に入るデキだと思ってます。 とにかく雰囲気づくりが上手い。 最初の古い蓄音機を思わせるノイズSEの中から聴こえてくるオルガンの旋律。 序章の旋律に続いては恐怖を予感させる重たいストリングスの音色が。 途中、恐怖を予感させるSEが雰囲気を盛り上げます。 そして、ドアの開く音からビートの効いたカッコよすぎる旋律に! もう鳥肌ものです。 最後はオルガンとフルートで奏でられる悲しい旋律。 オリジナルバージョンでは救いようの無い悲しい場面&曲なんですが、このアレンジバージョンでは最後は壮大に、そしてメジャーコードで次に続くような希望を持たせつつ締めくくります。 本当に良いです、この曲。
そして、名曲との呼び声の高い「メタルホーク」! これは、あのドラゴンスピリットで有名な「めがてん細江」氏(と、アサルトのBGM1で有名な野口氏)が担当です。 サウンドとしてはドラゴンスピリットよりもアサルトに近いですが、アサルトが全体的に重たい雰囲気だったのに対し、こちらは12beatで爽快感のある音作りをしています。 更に、それでいてパワフリャーなのがたまりません。 個人的には、BGM1とBGM4がオススメです。 BGM1は上空をかっ飛ばす&上昇下降時の爽快感をそのまんま曲にしたような感じ、BGM4は泣きのメロディで、終盤の過剰にディレイのかかったオーバードライブギターがたまりません。 泣けます。 余談ですが、メタルホークと同時期にオーダインというSTGも開発されており、このBGMが「ビデオゲームグラフィティ VOL.5」に収録されているんですが、この中の「Round X」が実はメタルホーク臭くて最高です。(w 一説には、オーダインのハードでメタルホークの曲を鳴らすとどうなるか、という検証(もしくは最初は純正SYSTEM-II基盤で作られてて、その頃の試作曲か?)の為に作られたのではないかという話を聞いたような気もしますが、実際どうなのかは私も知りません。(^^;) ちなみに、メタルホークは当時全盛だった体感ゲームの一種なんですが、あの「うぃ〜んすぽーんぐるんぐるん」感(なんやそれ)が大好きで、筐体を見かけると猿のよーにやりまくってたのを思い出します。(意外と難しいんで結局クリアできなかったけど…) 金と置き場所さえあれば、家にメタルホーク筐体1台欲しい!ってくらい好きでした。
続いてアルバムタイトルにもなってる「ウイニングラン」。 このゲーム自体が、当時としては珍しいフルポリゴンだったせいか、曲のほうもフュージョン風味ながらもカッチリしたリズムやみゅんみゅんしたシンセ音が多く、テクノフュージョンとでも云えばいいんでしょうか…ちょっと独特な音に仕上がってます。 ちなみに、サイトロンでの3rdアルバム「ファイナルラップ2」に入ってるコレの続編「鈴鹿GP」では、短いながらもイカれた曲が聴けるので個人的に結構オススメです。
最後は「スプラッターハウス」のオリジナルバージョン。 このゲームの曲って、「ジェニファーのテーマ(エンディング)」以外にあまり話題に挙がることは無いんですが、実は個人的には SYSTEM-I 時代でも1,2を争うほどの優れた曲だと思ってます。 メタルホークウイニングランのほうがハード性能も良くてきらびやかなので、音源性能の低いスプラッターハウスの曲は地味に聴こえてしまうのは致し方ないのかもしれませんが、スプラッターハウスの曲は、FM音源の性能を最大限に発揮した「FM音源だからこそできた曲」だと思います。 重たいベースラインにぐちょぐちょした音色。 ホラーな雰囲気に終始するゲーム本編に非常にマッチした音楽になっていると思います。 あと、特筆すべきなのはアルバムの編集の妙。 これはこのアルバム全体に云えることなんですが、要所要所に入る声などのSE(PCM)が非常に良いタイミングで入ってきて、聴いているだけでゲームの場面が思い浮かぶような作りになっています。(マスターデッドのテーマで、和田アキ子(というか吉村明宏)の「あの頃は、ハッ!」のパロディが入ってるのには笑ってしまいましたが^^;) 有名なジェニファーのシーン(って、実はこのゲーム未プレイなので伝聞でなんとなく聞いたくらいですが)はもちろんですが、個人的には最後のネームエントリーが印象的でした。 聴く者を悪夢に陥れるような不思議な旋律がフェードアウトした直後、闇の奥底から響き渡る断末魔のような悲鳴! これは怖いよ…本当に夢に出そうな強烈な印象を残す終わり方でした。 そういえば、最近のゲームミュージックは資料的価値を求める傾向が強くて、「オリジナル音源を高音質、SE・エフェクト無しで収録」というのがトレンドですが、こういう昔のアルバムにあった「編集の妙」というのが最近は感じられなくなって、ちょっと寂しい気もする今日この頃です。(もちろん、SE無しで資料的価値が高いものはそれはそれで良いとは思います。だから私が謎の仕事してるんだし^^;)
そんなわけで、ゲームミュージックファンなのにこのアルバムを聴いたこと無いって人は、持ってる友人を見つけて是非聴いてみてください。 万が一中古屋で発見したら、プレステ2とかを質に入れてでも聴くべし!(w それくらいオススメのアルバムなのです。
そういえば、ちょっと前に秋葉でこのアルバムが2000円くらいで売ってるのを見かけた記憶が。 これを見て「価値のわかってない店だなー」と思ったのは内緒。(^^;) でも、1週間後に観にいったらやっぱり売り切れてました。 手に入れた方、おめでとうございます。(ぉ