GRANADA CM-32L Version(自主録)

ゲームの完成度の高さと楽曲の良さで、一部で熱狂的支持を集めた、ウルフチームのアクションシューティング「グラナダ」のMIDI版です。

楽曲を担当しているのは、今やスターオーシャンなどの楽曲で知られる「桜庭統」氏。 実は、ウルフチームで数多くの楽曲を残しておられます。(…が、CD化されているのは極わずか。 勿体無いですね…)

で、実をいうと内蔵FM音源版はCD化されてて、最近復刻盤も出ました。(http://www.tanomi.com/shop/jyuchu/items01038.html >これ書いてる時点残り60枚強なので、欲しい方は今すぐアクセス!) しかし、今回あえてオススメするのは、CD化されていないMIDI版の音楽です。

私をご存知の方はわかるでしょうが、基本的にはFM音源大好き人間です。 このグラナダも、FM音源の泥臭さが出ていてなかなか良いです。(^^) …が、このグラナダに関しては、あえてMIDI版を推したいと思います。 それは、グラナダMIDI版に、当時ゲームミュージックの未来を垣間見たからです。

グラナダが対応しているMIDI音源は、まだGM/GS/XG規格すらできる前のもので、ローランド独自の「LA音源」というものが使われていました。 最近のMIDI音源は、割とリアル志向で、実在する楽器はかなり本物に近い音が出ますし、シンセ音もシャープな音が出ます。 しかし、LA音源は音のアタック部分にはPCMを使ってたそうですが(と思う)、やはり既存の楽器音は苦手で、リアルな音には程遠いものでした。 しかし、「LA音源ならでは」という音が出るのが特徴で、個人的には特に「DoctorSolo」などの音色はLA音源ならではといった感じで大好きでした。

んで、グラナダMIDI版ですが、当時のMIDI対応ゲームミュージックが内蔵プリセット音を通常の楽器に見立ててほぼそのまま使用していたのに対し、LA音源ならではといった音色をベースに、近似音色をエディットして複数パートに割り当てているようです。 それにより各パートの親和性が非常に良く、まさに「LA音源だからこそできる音楽」に仕上がっています。

音色の話をメインにしてますが、楽曲のほうももちろん素晴らしく、桜庭氏による、アグレッシヴかつプログレッシヴな楽曲が展開されます。 余談ですが、私個人の意見として「戦車ゲーの曲にハズレなし」というのがあります。 「グラナダ」をはじめとして、「アサルト」「ブレイザー」「グロブダー」など。(って後半は全部ナムコですね^^;) また、通好みの渋い曲が多いというのもこのジャンル(?)の特徴かもしれません。(グロブダーは明るい曲調だけど^^;) 機会があればここに挙げた曲も是非聴いてみると良いでしょう。(^^)

さて、話を戻して…先ほど書いた「MIDIによるゲームミュージックの未来を垣間見た」、について。

当時、まだまだMIDIで曲を鳴らすのはメジャーではなく、そもそも環境自体が高価でしたので、使ってるのは一部のブルジョアな人だけでした。 で、その頃に彗星のごとく現れたのがローランドの「ミュージくん」「ミュージ郎」といったDTMセット。 グラナダが対応しているCM-32Lなどが同梱されたDTMセットが安価で販売されはじめ、MIDIが爆発的に広がり始めるわけです。

んで、私はというと、その時代はまだMSXしか使ってなく、MIDIどころかFM音源すらほとんど使ったこと無い時代でした。 当然、MIDIなんてものにも触れる機会は無いわけで。 そんな時代に、当時コンピュータ部の先輩が「凄い曲があるから聴いてみろよ」と持ってきたのが、このグラナダCM-32L版の自主録テープでした。 早速持って帰ってその曲を聴いて愕然! (今聴くとそこまで凄いわけではないですが)当時はその曲のあまりの凄さに驚きました! 最初は内蔵音源で鳴らしてるのかと思い、「ぺけろくスゲー!!」と思いましたが、後日聴いてみたところ、CM-32Lという外部音源で鳴らしているとのこと。 これがMIDIとの初遭遇でした。 最近のゲームミュージックは、続々とMIDI音源に対応しているとのこと。 その事実を聴いて、「未来のゲームミュージックは、こんな凄い曲が聴けるようになるのか!!」と胸躍らせたものです。

…しかし、実際にはそうはいきません。 グラナダのようなCM-32Lのポテンシャルを生かしきった素晴らしい曲はほとんど登場せず、当時のゲームミュージックのCDに収録されていた「MIDIアレンジバージョン」なども、音色をMIDI内蔵に差し替えただけで、かえって不自然さが増してしまったものばかり。 こうして、私のMIDIに対する幻想はすっかり打ち砕かれてしまったのでした。(T_T)

で、大学の頃。 ローランドから新音源「SC-55」がリリースされ、ゲームミュージックも続々と対応していきました。 また、コナミから発売された「MIDI POWER」というCDでは、その「SC-55」だけで作成したポテンシャルの高い楽曲が次々と発表され、また少しMIDIに対して興味を持ち始めました。 そんなわけで、そのうちにSC-55mk2互換音源を購入し、自分でも弄り始めます。
…が、やはりMIDIの壁は厚かった。(T_T) MIDIのもう1つの致命的な問題「もたり」です。 MIDIは、音源をコントロールする為に膨大なデータを音源に送りますが、それを処理できる量には限界があり、あまり凝ったことをしようとすると音源がそれを処理できず、「もたり」「音抜け」が発生してしまうのです。(前述のグラナダも、結構ギリギリの線で作ってるようで、曲のループ時や演奏開始時、ドラムの密度が高い部分などでモタりが発生しています) これは参った。 FM音源やPSGなんかでは普通にできるはずのことなのに、MIDIだと思い通りにいかない! しかも、プリセット音色からパラメータをいじったり、エフェクトなんかを変えようとすると、膨大なエクスクルーシヴデータを送る必要がある! しかもよくわからん!!(T_T) …こんなわけで、MIDIに挫折した私は再びFM音源などをいじるようになり、しまいには専門サークル「FMPSG」(http://taka-p.homeip.net/fmpsg/)まで立ち上げるようになるわけです。(w

ただ、今はMIDIに対して思いっきり幻滅してるかというとそうではなく、むしろ同人界で壮絶なデータを作る方はFM音源などと同様に結構いらっしゃって、そういうデータを耳にする度に「すげー!!」と驚愕するのです。 …自分じゃそこまで作れないけどね。

あれ?グラナダの話のはずが何時の間にかMIDIの話になってる…ま、いいか。(ぉ