虫姫さまオリジナルサウンドトラック

http://www.cave.co.jp/amvisual/soundtrack/index.html
というわけで、やっと聴くことができましたので、ゲームミュージックサントラとしては久々のちゃんとしたレビューを書きたいと思います。
聴く前は、ケイブの最近のSTG曲の傾向からトランスを基調とした音楽ではないかと予想していたんですが…その予想は良い意味で裏切られました。 そこには、並木・岩田両氏の音楽スタイルを基盤としつつも、80年代後半〜90年代前半のゲームミュージックへのリスペクト(「パクり」と書くのは語弊がありそうなので書きません)に溢れた楽曲群が収録されていたのです。

個人的に印象に残った曲をいくつか挙げてみたいと思います。

[Tr.01 姫さま15歳]
曲調としてはケイブSTGお馴染みの機体セレクト系の曲なんですが…いつもの戦意を高揚させるような曲調ではなく、メロディが妙に明るい! ここで、いつもの作品とは何か違うという予感を感じさせます。

[Tr.02 シンジュが森へ]
モロに「ガレッガ1面」的な曲です。 独特の浮遊感といい曲調といい、間違いなく並木氏の曲ではないかと思います。 しかし、今回はメロディが若干メロディアスで、90年代初頭くらいのゲームミュージック寄りな香りがします。 しかし、微妙にロールしてるメロディは…どっかでこの曲調は聴き覚えあるんだけど…なんの曲だっけな?(※後ほど何なのか判明)

[Tr.05 更に砂漠も超えて]
非常に明るく疾走感溢れる曲です。 今度はマジカルチェイス的な香りがプンプンしてます。(w これは岩田氏のほうの曲なんでしょうね…たぶん。 バックでピコピコ動いてるシーケンスパターンも良い味出してます。

[Tr.06 炎の大地を歩く]
コレはモロに12beatな曲ですねぇ。 私が以前、「最近のゲームミュージックには12beat成分が足りない」みたいな事を書いたのを感じ取ってくれたのか(んなわきゃぁない^^;)、昔のSTGゲームミュージックではお馴染みの曲調となっています。 ただ、個人的にはこの手の曲は3面ではなくて5〜6面くらいに出てくるイメージがあるんですが…(^^;) でも、元々5面しかないSTGなので、このくらいに出てくるのは妥当なんでしょうか。

[Tr.07 流星の夜に似た]
これは、聴いた瞬間ある曲が浮かびました。 それは…ドラゴンセイバーの最終面の曲。 神秘的なイメージといい、アルペジオにディレイをかけて深みを出しているところといい、これは間違いなくこの曲を意識してるんでしょう。 どちらも良い曲です。 でも、ドラゴンセイバーの曲と違うのは、完全に深遠な感じに終始するのではなく、後半のメロディが若干自己主張しているところ。 このあたりで個性が出ているのではないかと。

[Tr.09 あなたがそうなの?]
コレはコナミ系のボス曲にありがちなパターンです。 バックで鳴ってるストリングスの不安を煽る進行といい、後半の変拍子やオケヒット?といい、モロにそんな感じがします。 なんだか聴いててニンマリしてきました。(w

[Tr.16 シンジュが森へ ]
こちらはアレンジバージョンです。 担当は、元ナムコのコンポーザの細江慎治氏です。 曲調はほとんど変えておらず、浮遊感を落としてフュージョン風味を若干前に出したようなアレンジなんですが…ここで先ほど疑問に思ってた、ロールしている曲の正体に気づきました。 コレってダートフォックス的なメロディなんですね。 (多分)ダートフォックス的メロディにインスパイアされて作った曲を、その対象となった曲の作曲者がより純粋な形に再構築するとは…不思議な縁といいましょうか、面白いものですね。
(6/19追記:改めてダートフォックスを聴いてみたところ、前述のロールしてるメロディは出てきませんでした…音色がソックリだったからでしょうか…嗚呼勘違い〜^^;)

[Tr.17 炎の大地を歩く ]
このアレンジは、同じく元ナムコの佐宗綾子氏が担当。 めがてん細江氏は、「ドラスピ」を代表とするメロディアスフュージョン系な作風も印象に残ってますが、Aya氏はMEGA氏よりも後の方で、どちらかというと「F/A」「リッジ」「X-DAY」など、いわゆる「イカレ系」の創始者といった印象のほうが強いです。(ちょうど今発売中のPS2版 beatmaniaIIDX 9thStyle に収録されているイカレ系な曲「One or Eight」を作ったのもこの方) なので、そっち方面のアレンジで来るかと思いきや…まさかオーケストレーションを基調としたアレンジが出てくるとは思いませんでした。 明らかにゲームミュージック寄りな原曲とは違い、ドラマチックな部分を引き出したアレンジは、コナミ系よりも、どちらかというパルスターなどのカプコン発展形を彷彿とさせるような曲に仕上がってます。 更に、終盤はオーケストレーションにシンセのメロディが絡みつく展開で、聴いてて鳥肌が立ちました。 原曲とは全く違う完成度の高い世界を見せてくれたこの曲は、原曲破壊アレンジが非常に良い形で成立した好例だと思います。

こんな感じで、多分80年代後半〜90年代前半のナムコ・コナミミュージックにハマった人なら、きっとハマるのではないかと思います。 …と同時に、作曲者のお二人のルーツを垣間見たような気がします。(^^;)

ただ、昔のゲームミュージックっぽさを匂わせる曲調として非常に聴きどころが多いものの、「傑作」にまでは成り得ていない、というのが正直な感想ではあります。 別に聴いててツマラナイというわけではない(むしろ最近のゲームサントラでは極上の部類だと思う)のですが、昔のゲームミュージックにあった、「一度聴いたら忘れないほどのインパクト」に欠けてるような気がどうしてもしてしまいます。 リスペクトは感じられるんだけど、オリジナルを超えられなかった…といった感じ。 元々、並木氏も岩田氏も90年代にブレイクした方なので、どちらかというと旧世代のメロディアスなゲームミュージックとは若干違う感性をお持ちなのでは、と推測されます。 なので、80年代のゲームミュージックと全く同じものを求めるのは酷なのかもしれません。 ただ、これらの曲からは、相変わらずお二人の個性は感じ取ることができます。 もし、今後トラディッショナルなゲームミュージックとお二人の個性が融合し、化学反応を起こしてもっと素晴らしいものが出てきたとしたら…今後が楽しみです。