YsIII J.D.K.Specialの曲から見えてくるX68K的コミュニティ

http://www.falcom.co.jp/ysf/music/index.html
今日出かけるときに、フェルガナの誓いのオマケについてきたCDから、このCDの曲をずっと聴いてました。 実は、このCD(カセット)は発売時に既に所有しててリアルタイムで聴いてたりなんかしますが、聴いてると色々と思うところあって、あまりGMに関係無い話も含めて改めて感想を書いてみたり。
このサントラは、Falcomの当時のサントラでお馴染みのPC-88/98やX1版ではなく、恐らく最初で最後のX68000版が収録されています。 当時のFalcomが標準でリリースしていたPC-88/98の音源スペックは、FM音源3音(モノラル)+PSG(SSG)音源3音といった構成ですが、X68000ではFM音源8音(ステレオ)+PCM1音といったスペックになっています。 その為、YsIII の音楽もPC-88/98系とは全く異なるアプローチで、音色からアレンジに至るまで大胆に変更した意欲作となってます。(確か、X68000への初のFalcom自社移植だったのでかなり気合いが入ってたというのをどこかで見た気がする)
ただ、正直書くと、個人的にはPC-88/98版の曲のほうが好きです。 X68000版は、FM音源の音色を全面的に変え、SSGが無くなった分、SSGパートも全てFM音色に割り当ててあります。 更に、リズム関係は全てPCMになりました。 しかし、特にSSGが無くなったこととPCMに対応した事が、原曲のイメージを大きく壊してしまうことになってしまったように思えます。 ドラマチックながらも繊細なイメージがあったPC-88/98版と比べて、X68000版はかなりガサツな印象になってしまいました。(T_T) その印象を決定付けたのがPCMで、個人的にスネアドラムのPCM音色が当時ちょっと許せませんでした。(T_T) あのドラム缶を叩いたような『ガン!』って音がもー…ねぇ。 もうちょっとマシな音はあっただろうに…なんでこの音にしちゃったのかなぁ、というのは今でも悔やまれます。(個人的には、「Music from YsIII」に入ってた頃の音色のほうが好みだった) ただ、散々こき下ろしましたが(^^;)、単独の作品としてはそこまで悪くはありません。 コレはコレでYsIIIのアレンジと思って聴けば良いかも。 ちなみに、個人的にはこの後に収録されているJ.D.K.Bandのエルダーム山脈の泣きのギターが最高でした。
んで、ふと思ったわけですが、YsIIIに限らず、X68000というマシンはゲームミュージック…というか、リリースされるソフトやユーザの意識なんかも他のマシンとはかなり違った印象を受けます。(私はX68000などは所有してないので、以下個人的偏見が含まれる可能性があります^^;)
DOS/Vゲイツ窓(厳密には、その前の日電98マシンかな?)がある程度天下統一をする前までは、各社全くスペックの異なるパソコンをリリースしてたわけですが、みんな自分の所有するマシンのどこかにマイノリティを感じていたと思うんですよ。 例えば、PC-88だって、当時のパソコンソフトがリリースされる際の標準機種とされてはいたものの、色数は少ないし、解像度もそこまで高くはありませんでした。 MSXも、性能は明らかに他のマシンに劣っていたので、生まれた当初からマイノリティの道を余儀なくされていたと思います。 その他のマシンに関しても、存在としてマイノリティな感は拭えず、遊びたいソフトがリリースされなくて涙で枕を濡らした人も多かったと思います。
ここで、X68000はどうでしょう? 私(当時MSXユーザ)から見たら、当時のマシンの中では性能はトップクラスで、「何でも出来る魔法の箱」といった印象でした。 グラフィックやサウンドの性能は特に抜きん出ていて、デザインもあの独特のマンハッタンシェイプが異彩を放っていました。 実際に、X68000でリリースされる他のパソコンからの移植ソフトに関しては、音楽が全く異なるアレンジになっていたり、グラフィックに大きなテコ入れがされていたり、はたまた全く違うソフトになっていたり(^^;)と、むしろ「X68000に出すからには単なる移植ではダメだ」みたいな雰囲気すら漂っていたように思えます。 そんなわけで、私から見たX68000というコミュニティは、何か選民思想があるというか…とても不思議なものに思えてなりませんでした。
そして月日が経ち、当時のPCは全て生産中止となり、メーカー的には絶滅してしまったわけですが、そんな中でもそのPCを使いつづけたり、はたまた新たな周辺機器を開発したりするといった同人活動は今でも続いていたりします。 X68000MSXは、絶滅してからも熱狂的ファンがいて、同人活動も行われていたのですが…ここに来て、それぞれのコミュニティのユーザの意識に違いが現れているように見えるのが興味深いです。 MSXに関しては、今でもMSXマガジン等の書籍が発刊されたり、1チップMSXが商品化に向けて進められたり、また同人サークルも、いくつかが未だにアクティヴに活動しているようです。 それに対して、X68000は(伝聞ですが)同人サークルはほとんどが活動していないと聞きます。 事実、X68000専門のイベントでも、サークル出展が数えるほどしか無かったそうです。 この違いは何でしょう…?? X68000は、当時「何でも出来てしまう」マシンでした。 その高性能に惹かれた人も多かったと思います。 しかし、X68000のスペックを遥かに超える現代のパソコンがある現状では、X68000ユーザにとっては敢えてX68000に留まる理由が見つからなくなってしまったのでは、という気がします。 それに対して、MSXは当時からスペック的にも他機種から見劣りしていたのは否めません。 しかし、MSXはスペックが低い故に、それをカヴァーする為のテクニックやオリジナリティ、センスが要求されました。 その結果、MSXでしか表現できないソフトというものが多数生まれました。(もちろん、エミュレーション的手法などで他のマシンで再現するのは容易かもしれませんが…) しかし、真の理由はそこではなく、MSXに対する思い入れや愛情なのではないか、という気がします。 MSXでスペック以上の効果を出すソフトを作るには、MSXの限界や使いこなすテクニックなどを知る必要があります。 つまり、これらを駆使する過程において、どうしてもMSXの深い部分を知っていく必要が出てくるわけで、その分だけ思い入れが深いのかなぁ、という気がしてきました。(※この見解は、ソフトを作る側としての意見です。 単純にゲーマー的ユーザとしての視点ではまた違うのかもしれませんが…)
念のためもう一度書いておきますが、私は基本的にMSXユーザなので、X68000の事はあまり詳しくありません。 もしかしたら非常に的外れの事を書いているかもしれません。 認識に違いがあれば申し訳ありません。m(_ _)m