Holy 8bit Night

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本ブログとしてはコレを取り上げないわけにはイカンでしょう!
…というわけで、Chiptune界のアーティストが一堂に会したアルバム「Holy 8bit Night」を遅ればせながら入手しましたので、感想を書きたいと思います。
まず、このアルバムは何者かといいますと…誰もが知っている国内外のクリスマスソングを、ゲームボーイファミコン等の音源でアレンジしたアルバムです。
ちょっと話が逸れますが、実は同じ趣向のアルバムが大昔にリリースされていました。 それは、ゲームミュージック黎明期にアルバムを多数リリースしていた(YMO細野晴臣氏監修の世界初?のゲームミュージックアルバム「ビデオ・ゲーム・ミュージック」もココから出ていました)アルファレコードの「G.M.O.レーベル」からリリースされた企画アルバム「G.M.O.クリスマスソングス」で、ファミコン内蔵+ディスクシステム音源相当で、クリスマスの定番ソングを演奏したものが収録されていました。 こちらのアレンジは、ファミコンらしさを残したシンプルなアレンジながら非常に聴きやすく丁寧に作られており、今でもたまに聴いています。 このアルバムは、近年サイトロン(現ハピネット)より復刻されたのですが…企画意図がイマイチ伝わらなかったのか、以前サイトロンに近い方から伺った話だとあんまり売れなかったそうで…(^^;) 個人的には、ファミコンらしさを活かしたなかなか良いアルバムだと思ってますので、見かけたら是非買ってあげてください。 お願いします…m(_ _)m

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…さて、話を戻して「Holy 8bit Night」ですが…こちらは、企画内容としてはほぼ同じであるにも関わらず、収録されている楽曲の方向性は正反対です。 「G.M.O.クリスマスソングス」が割と原曲に忠実なアレンジ(ダウンサイジング)を施しているのに対し、「Holy 8bit Night」では、あくまで「今の」技術を使って、アレンジャーの個性豊かに演奏しているところが決定的な違いです。
あまりに面白いので、今回は久々に全曲レビューでいきたいと思います。

01. Christmas Eve - Saitone Remix by Saitone
いきなり大本命登場!といった感じです。 正直、アルバムの中で一番のお気に入りがこの曲だったりします。 色々な音が楽しそうに跳ね回っている中に、女性ヴォーカル(コーラス)が花を添えています。 なんだか聴いてて幸せになれる1曲。 …ていうか、結構複雑なアレンジになっていて、最初コレが山下達郎のアレだと気づきませんでした。(^^;)

02. Koibito ga Santa Claus (Sweden chip mix) by COVOX
不穏な低音イントロが鳴り響き、最初は何の曲かわからなかったのですが…聞き覚えのあるメロが流れて「ユーミンかよ!」と絶句w イントロ以外は割とシンプルなアレンジで聴き易いですが、個人的にはもうちょっと凝っても良かったかなー、と。 あと、サビの和音構成が(多分意図的に)変えてある箇所があるんですけど、あのサビのむねキュンな感じが一番ツボなこの曲だったので、変えられてしまったのはちょっと残念。

03. Goto80's Super Wail Remix by Goto80
これはなかなか面白いアレンジです。 短く切った高速エンベロープで軽く鳴らしたコードにギロを模したと思われるノイズ、そこに絡むメロはロボットヴォイス風。 いいなぁ、コレ。

04. last christmas Nitro RJB remix by Far East Recording
矩形波の短めの高速エンベロープで和音をとるところはTr.3っぽい印象もありますが、こちらはメロが三角波系の柔らかい音が中心。 でも、実は一番心地よいのがバックで鳴ってるFM音源ブラス風のベースラインだったりします。(^^;)

05. Winter Wonderland by Bit Shifter
矩形波中心のシンプルな曲調は昔のPSGを使ったゲームミュージックっぽいなぁ…と思ったら、ショートノイズと三角波キック?を駆使した細かいリズム隊は今風のチップチューンといった風情。 クラシカルなスタイルに今風のセンスを掛け合わせた感じでしょうか。

06. Sleigh Ride - Saitone Remix by Saitone
Tr.01に引き続きSaitoneさんの作品。 これもオススメ! メロを細切れにして畳み掛けるように心地よく鳴らしていくその手法とセンスに脱帽です。 あと、Saitoneさんの曲って1音1音に愛が溢れている気がします。 私が「Chiptune」(という言葉)に持つイメージは、どうしてもテクニック重視かつ音色に癖があることから「トガっている」印象があったんですが、Saitoneさんの紡ぎだす音って、アタックの柔らかさや音色から「優しさ」「温かさ」が見えるんですよ。 正直、Saitoneさんの事はあまり知りませんが、もっと色んな曲を聴いてみたいです。

07. This Christmas - Tanikugu remix by Tanikugu
アレンジとしては特に奇をてらった感じは無いものの、1音1音が丁寧に作られていて好感が持てます。 スネアがちょっとコナミっぽいかなw

08. Frosty RX by she
最初はTr.07と同じで普通にファミコン音源へのダウンサイジング…かと思いきや、本編に入るといきなりカッコ良くなります。 細やかに変調する矩形波音色、カッコいいベースライン、よりコナミ臭いスネアwなど、聴きどころが多い曲です。

09. Parade%Of%The%Wooden%Soldiers.gb by suge
これは、割とG.M.O.クリスマスソングスの方向性に近いですかね。 綺麗にダウンサイジングされており、まさに「ファミコンミュージック」といった趣。 …と思ったら、やはりコレだけでは終わらないのがこのアルバムw 後半になってノイズが暴れだし、重たいキックが入って、怪しげなベースラインが動き始めると、マイナーでディープな曲調へと一変。 そう来るか!と唸った作品でした。

10. Merry Christmas Mr.Lawrence (One gameboy remix) by Xinon
超有名な「教授」の曲をどう料理するかと思えば、あのスピリチュアルな印象の曲をキックとショートノイズと低音ベースのリズム隊がグイグイと引っ張っていくカッコいい曲に仕上げてきました! これまた面白いアレンジだと思います。

11. Gin Gin Jingle Bell NSF Edition by K->
Famicompo mini主宰でお馴染みの我らがK->氏の作品。 まず、「クリスマスソング」というお題でこの選曲をしてきたところからして「らしい」なぁ、と。(^^;) 敢えて高速エンベロープに頼らず、拡張音源(N106?)を加えて無理なく和音を鳴らすことで聴き易い仕上がりになっています。 そして、何と言ってもオールドゲーマーならいやがおうにも耳に入ってくるネタの数々w ファミコンスーパーマリオシリーズを思わせるフレーズが随所に無理なく仕込んであって、ニヤニヤしながら聴いてました。

12. White Xs by Bud Melvin (w/ Jessica Billey)
謎のヴォーカルとビートから始まるこの曲、最初は全く原曲が浮かばないのですが、途中から更に怪しい男性ヴォーカルに矩形波ベースが絡んできて、更にバンジョー?の調べがカオスへと誘ったところで、やっと原曲のモチーフが出てきます。 原曲のおおらかな雰囲気とは違い、ねちっこい高速エンベロープのコードが絡んだりして、なんだかよくわからない不思議な曲に変貌しています。 そういえば、私も昔この曲はSCCでアレンジしたことがあります。 このCDに収録されている雰囲気とは正反対で、コナミSTGっぽい上空をカッ飛ばすような爽快感を目指して作った曲でした。(このへんでまだ聴けます…Result3位のやつです

13. Xmas Song Megamix (plastic sputnik arcade punk) by hally
最後はVORC主宰のhallyさんの曲です。 ゲームボーイファミコンなどの矩形波(PSG)系音源が主流の中、hallyさんだけはFM音源中心のトラックメイキングとなっています。 敢えてFM音源のチープさを残した音色で、ギターソロなどを思わせるパートなど、なかなか面白い仕上がりになっています。

というわけで、個人的には非常に満足度の高いアルバムでした。 この手の音にワクワクする方は必聴のアルバムだと思います。 是非!