まもるくんは呪われてしまった! サウンドトラック

(Amazon) まもるくんは呪われてしまった! サウンドトラック


最初に書いときます。
ゲームミュージック好きなら今すぐ買って聴いてください! 絶対にハマるはずですから!!
ゲームミュージックといえば、ここ10年ちょいくらいは(リリースされるハードにもよりますが)全般的に表現の制約がほぼ無くなり、従来のゲームミュージックの枠からの脱皮を試みた時期ではないかと思います。 これにより、「ゲームミュージック」という言葉の定義などを巡っては、ファンの間でもしばしば意見が割れ、論争に発展することもありました。 広義の意味合いは、「ゲームのBGMとして使われていれば何でもゲームミュージック」なはずですが、ファンとしてはやはりゲームミュージックならではの「お約束」とか「心地よさ」を求めてしまう部分も少なからずあるとは思います。(しかも、世代や好みによってその解釈が異なるのが困ったところ^^;)
ここ数年は、ファミコン20周年を皮切りに広がりだしたレトロゲームブームに加え、「Chiptune」「8bitミュージック」という言葉に代表されるように、主にファミコンゲームボーイ等の矩形波系コンシューマ音源を用いたアレンジも流行っています。 …が、「ゲームミュージック」として思い浮かべるイメージとして、人によってはこれよりももう少し先…80年代後半〜90年代前半あたりのアーケードゲームあたりを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。 この頃のアーケードのゲームミュージックの特徴として特に顕著だったのは…

  1. FM音源+PCM音源という、生音ではないが矩形波系よりも表現力の高い音源の組み合わせ
  2. キャッチーなメロディ&時たま現れる印象的なフレーズ(別名:クサメロ)
  3. 3連符&シンコペーション、音符のロール等で表現される独特なノリの良さ

あたりではないでしょうか。 しかし、このような特徴を兼ね備えた音楽は、ここ数年はなかなか耳にすることができませんでした。 ゲームミュージックの歴史と共に、この伝統芸能的表現技法も風化してしまうのでは…と思っていた矢先に出たのが、今回ご紹介する「まもるクン」です!(前フリ長ッ!)
「まもるクン」の曲には、上記でご紹介した「失われつつあるアーケード系ゲームミュージックの王道」フォーマットが全部入ってるんです! 聴いてると自然と身体がノってくるこの感覚…このサントラを聴いていて確信しました。 懐古趣味と思われようとも構いません。 あぁ、俺はここ10年くらい、ずっとこういうゲームミュージックを待ってたんだ!…と。
以下、もうちょい具体的に「まもるクン」のサウンドについて書きたいと思います。 まず、鳴っている音(音色)について…これは間違いなくFM+PCMの正常進化系ですね。 ただ、FM音源丸出しの泥臭いサウンドではなく、もうちょっと洗練された感じがします。 あと、PCM音源は、それと判るようなノイズも含めて当時の「味」がよく出てると思います。 しかも、ローレートPCM系にありがちな「こもった音」とは違い、もっとザックリした音が出てます。(余談ですが、こういう音はPC-98x1のFMP+PPZ8で16〜22kHzあたりの音を44.1kHz合成モードで鳴らすと割と雰囲気が似た音になります。 Windowsで動くOPNA系音源エミュではこのへんの再現がイマイチなので、シンバルとかのPCM音が結構違って聴こえる気がします) この出音は、この手のゲームミュージックのパイオニアである(と同時に自らが作り上げた「ゲームミュージックらしさ」という枠を自ら破壊した)めがてん細江氏などが在籍したナムコ〜アリカ初期の音にソックリな気がします。 …って、まさか本当に同じ「石」を積んで鳴らしてる??
曲調は、先ほど書いたとおりキャッチーなメロディ重視型の曲が多く、全体的なイメージで言うと、個人的には「出たな!!ツインビー」(コナミ)っぽい雰囲気を感じました。 …が、途中で何曲か必殺の「クサメロ」が炸裂しており、個人的に特に印象に残ったのが「Will Force」「Bless you! girl」の2曲! あーヤヴァいよこの曲! あまりの良さに思わず単曲リピートで50回くらい連続で聴いちゃったよ! 前者はまさにこの手のゲームミュージックとしては「王道」のメロだよなぁ… 後者に関しては、実は「Bless you! boy」という曲を移調させただけなのですが、個人的には断然こっちのほうが好き! 「〜boy」も心地よいメロディで好きなのですが、「〜girl」で調を変えたことで、感情の起伏がより強く鮮明に感じます。 同じ曲でも、調によってここまで雰囲気が変わるとは!(また余談ですが、SEGA MARK-III に移植されたアーケードゲームは、DCSG(矩形波3音+独立1ノイズ)で最も心地よく聴こえる調に移調されてました。 そのせいか、アーケード版よりもMARK-III版の曲のほうが好きなタイトルが結構あったり)
また、もう1つの特徴として「メロディが頻繁にロールする」というのがあるんですが…これは80年代後半くらいのゲームミュージックの表現手段の1つでもありますが、どうも聴いてるとこのへんのルーツはYMOなんじゃないかな…という気がしてきました。(RydeenとかInsomniaとか) ずっと聴いてると、曲によってはYMOの例の温泉マークが頭に浮かんできたりして。(^^;) 「まもるクン」の曲担当であるSuperSweepの安井氏は、以前「テクニクビート」の「LOVE MAHJONG」でもテクノポップな匂いを感じる曲を出したりしているので、案外氏のルーツはこんなところにあったりするのかなぁ…なんて思ったり。 
あと、メロの心地よさを構成する重要な要素の1つとして「適度な歯切れ良さ」というのも大きなポイントかと思うのですが、このへんもバッチリです! ココがイマイチなゲームミュージックは全体的にもっさりした感じになってしまうのですが、これまた理想的なタイミングで音の長さを調整してあるようで、そんな感じは微塵も受けません。 素晴らしい!!
全般的には「失われたゲームミュージックっぽさ」が前面に出ているのですが、真の最終面・最終ボス2あたりになると、安井さんらしさが顔を覗かせます。 前者は淡々と低音でリズムを刻むところに各面の曲が浮かんでは消え…という展開。 これを聴いた瞬間、メタルブラックのサントラ(G.S.M.1500シリーズ)に収録された最終面の曲を思い出したのは多分私だけじゃないはず…(と同時に、思わず「まねき猫」「地球まっ二つ」ってのも思い出したわけですが^^;) 実際のゲーム画面を見ていないので何とも云えないのですが、そのあたりを意識して作ったんでしょうか…? あと、後者に関しては4つ打ちリズムとコードやメロのブレイクの入れ方なんかがとっても「安井さんらしい」感じで溢れてて、独特のテンションを作り出しています。
全般的に素晴らしいデキなんですが、敢えて難を挙げるとすれば、(ラスボスを除いて)ボス曲がいまいちボスっぽくないところでしょうか…(^^;) コナミのこの頃の曲みたいに、変なテンションで畳み掛ける「いかにもボス」っぽい曲があれば完璧!だったんですが…(ってもコレは私の好みによるところが大きいんですけど^^;)
それにしても、安井さんの曲を初めて聴いたとき(多分テクニクティクスあたり)は、他の曲と比べるとミニマルで淡々とした曲が多く、「新しい世代の感性だなぁ」と感じていたのですが、まさか氏がゲームミュージックミッシングリンクを取り戻す最重要人物になるとは思ってませんでした。 今後の作品も超期待!です。(^^)

…思い出したのでついでに。 このCDのブックレットの最後に書いてある「まもるくんは呪われてしまった 公式サイト」のURLがSweepRecordのサイトになってしまってるのは流石にマズいんじゃなかろうか…と思った。(ていうか、私自身がこのゲームをプレイしたことが無いので、どんなゲームかなぁ…と思ってアクセスしようとしたら「いつものサイトじゃん!」って感じだったのでw)