sono / detune.

(Amazon) sono / detune.


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以前、10年に一度の名作!と絶賛した1st.アルバム「わ・を・ん」から早2年ちょい。 新譜を待ち焦がれていましたが、遂に2ndアルバムが出ました!! …というか、これを書いている時点でまだお店には並んでいないはずですが、オフィシャルの通販サイト「ヘッドホン」で先行発売(非売品の2曲入りCD-R付き!)ということで、速攻で入手して聴きまくってます。
1stアルバムは(今考えると)直球ストレートのせつなさがギュッと詰まっていて、そういうのが好きな人(もちろん拙者含む)はハートを打ち抜かれて一目惚れ必至!なので間違いなくオススメでした。 それに対して、今回の2ndアルバム「sono」は、根底にdetune.らしい優しさとせつなさを持ちつつ、変化球な表現で「そう来たか!」というのが第一印象でした。
前作「わ・を・ん」はアルバムの最初から最後まで一本筋の通ったコンセプトアルバムで、聴き込むほどにリスナー自身が主人公となって1つの物語をアルバムを通じて体験するような一体感がありました。 しかし、今回のアルバム「sono」は、アルバムを通じて1つの物語ではなく、1曲完結のオムニバスといった印象。 舞台も様々なシチュエーションがあり、場所だけに限らず、時には時空を超えて幼い頃の記憶を見ているような不思議な感覚に陥ります。 現実か幻か…聴いているとおぼろげに白昼夢を見ているようです。 この感覚はどこから来るのか?というのを考えてみた時に、出てきたキーワードは「曖昧」。 あるいは「(情緒)不安定」でも良いでしょう。 前作は、音楽表現的にもある意味「王道」で、ブリッジ的な曲を除いて「徐々に盛り上げていってサビで泣かせる」という不文律が横たわっていました。 もちろん「王道」な曲はハズレの無い安牌ですし、実際パブロフの犬のように好んで聴いてしまう自分がいるので(^^;)、ソレはソレで全然アリ。 しかし、それと比べると今作「sono」は感情の盛り上げ方が全体的に曖昧なのが音楽的に決定的な違いだと思います。 しかし、それは決してネガティヴな意味ではありません。 不安定な感情の揺らぎや曖昧な感情は人間誰もが持つもの。 むしろ、そちらのほうが人間のあるべき姿として自然だと思います。 一方的な押し付けではなく、不安定で曖昧な感情を表した「sono」の音楽は、むしろごく自然に心に染み渡ってきます。 その「曖昧さ」が心地良い。 それでいて、心地良く聴き惚れて油断していると、不意にせつないフレーズや不安定な和音が現れてハッとさせられる…だからこそ、その必殺のフレーズがいつまでも胸に引っかかるんだと思います。
「わ・を・ん」は即効性のあるアルバムでしたが、「sono」は聴くたびにじんわりと沁みてくるアルバムだと思います。 聴くたびにスルメのようなその味わいが癖になり、気づけばその魅力から離れなくなること必至。 例えるなら…「わ・を・ん」が一目惚れだとすれば、「sono」はその先にある愛情なのかもしれません。(なんじゃそりゃ) 性格の異なるアルバムなので単純に比較するのは難しいのですが、とりあえず「むねキュン」したければ両方聴いておくとイイよ、とか書いておこうw

…これだけじゃアルバムの魅力を語れないので、久々に全曲レビューでも。


1. manufacture
ある意味、「sono」を象徴する1曲。 前作「わ・を・ん」のオープニング「mono omoi」は、サイン波のシンプルなフレーズが綺麗に2曲目「小春日和もどき」に繋がっていましたが、今作の「manufacture」はいきなり混沌とした音で幕を開けます。 混沌の中にザッピングする子供の声。 日常空間が歪んでいく中、最後の笑い声でカットアウトして突如どこかに放り出される…そんな感じ。 ちなみに、この子供の声はジャケットを描いた西島大介氏(このジャケもまたイイ!)のご令嬢の声らしいのですが…最後の笑い声「ンククッ!」ってのが氏の漫画「ディエンビエンフー」の「プランセス」の笑い声に瓜二つで「コレが元ネタか!」とか思ったり。

2. mybrowser
イントロの怪しげなベースラインで異世界に放り出されたリスナーを不安感に陥れるように見せかけて、実は聴き進んでいくとリスナーの傍にいて優しく包んでくれるような曲。 心地よいです。 癒されます。

3. sono
「ヒアホン1号」の付録CD-Rでラフミックスが先行公開されていましたが、今回のアルバムではヴォーカルがよりクリアになって歌詞が聴きとりやすくなってます。 幼い頃の記憶を思い起こさせる優しい曲ですが、サビでドキドキと後ろめたさが交錯したような感情が沸いてきてとても印象的。 このへんの「得体の知れない曖昧な感情」というのは、まさにアルバム「sono」を象徴する曲ではないかと。 ちなみに、今回初めて歌詞全文をちゃんと見たのですが、「眞子ちゃんに口付けした」の「眞子ちゃん」ってのは…やっぱり「様」のつくあの方なんでしょうか…? そういうのを思いつつ聴くと、背徳感が加わって余計ドキドキしますw

4. オフィシャルサンバイザー
ここで「sono」とは雰囲気が変わってちょっとアップテンポな明るい感じに。 印象としては、前作「わ・を・ん」の最後に入ってた「かいしんのいちげき!」(一聴した感じ意味不明な曲ですが、じつは逆再生させるとちゃんとした曲になります)を少しまったりさせたような感じですかね。 「旧字体のなまめかしさで/近未来を表したらどう?」とか「記憶の奥の/想い出は/知らなんだ/知らなんだった」という歌詞のセンスに目を奪われました。 …というか、「オフィシャルサンバイザー」ってタイトル自体が謎。(^^;)

5. アルペヂヲ
ギター弾き語り一発録り的な雰囲気の、題名どおりアルペジオが心地良い曲。 これも癒されますなぁ。 「曇り空に浮かべてたら/時雨れた」などで字余りっぽくリタルランドするのがかなりツボに入った。 関係ないけど、「アルペヂヲ」って、この表記を見ると「和田ラヂヲ」を思い出しますw

6. 牧童牧歌
聴いた瞬間「ドナドナ」を思い出したw 小学校の音楽室から聴こえてきそうなオルガンや小太鼓大太鼓が郷愁を誘う、ちょっと寂しい雰囲気の曲。 妙に印象に残りました。

7. さとりのしょ
こちらは聴いた瞬間「ミスチルっぽいな」と思ったw 言葉の詰め方とかイントネーションとか曲の雰囲気とか。 でも、歌詞を見ると独特の言い回しはやっぱりdetune.だ!って感じ。 (アルバムの中では)アップテンポでキャッチーな曲なので、人によってはこのアルバムで一番好きな曲、って人もいるかも。 このアルバムの中では最もポジティブ度が高く、聴いてると元気が出てきます。

8. 24
これは名曲! シンプルなピアノの調べに乗せて聴こえてくる優しい声が心に沁みます。 このアルバムの中で最も日常(現実)に近いのですが、スローモーションで流れる風景描写が心情をよく表していて、映画の1シーンを切り取ったかのような雰囲気です。 どこを切り取っても絵になる、そんな素晴らしい曲だと思います。

9. ふる
ブリッジ的なインスト曲ですが、飛び飛びに交錯するシンプルな音が前曲「24」の余韻を残しつつも最後の舞台へ誘います。

10. 八月は嘘
出た! ライブでも演奏されていた、個人的にはイチオシの超名曲! シンプルなバンドサウンドは前作「わ・を・ん」に収録されている名曲「ムシバメルモノ」に近いかなぁ。 この曲を聴くと、sonoの今までの収録曲に渦巻いていた様々な感情が、抑え切れなくなってここで堰を切って溢れ出すような感覚に陥ります。(でも、ストレートに出さずにちょっと我慢しつつも抑えられない感じがまたイイ!) 単曲で聴いていた時も名曲だと思いましたが、アルバム「sono」でこの位置に収録されることによって、よりその存在感が増した気がします。
…以下余談ですが、この曲の歌詞で「麦藁帽子なら/忘れてきた/あの夏の最後」「初恋を/知る前の/僕からの/ぷれぜんと」「いつでも行けそうな光景はすぐに/気づけば消えてしまう」などと唄われているわけですが、これが私の幼い頃の記憶(現実か空想なのかわからないですが)とオーバーラップしてしまいます。 何度か夢にも出てきた情景なんですが、福岡(母方の実家があった)の原町駅(「はるまち」と読みます…実在する駅)を降りると目の前には草原が広がっていて、麦藁帽子をかぶった女の子とその草原を走り回る…そんな夢。 その後、その風景が実在するのかどうか原町駅に実際に行ってみたりもしたのですが、(当然ながら)草原が広がるような情景は既に無く、そこで見た風景が本物なのか空想なのかは未だにわかりませんが、たまに夢に出てきて、夢が醒めると現実に引き戻された感じでちょっとだけ切ない気持ちになります。 この曲を聴いていると、猛烈にその事がシンクロして思わず涙が…

11. for the little match girl
穏やかなコーラスに落ち着きを取り戻しつつ、「sono」が見せた幻想は余韻を残しながら時計の振り子の音と共に記憶の底に沈んで行き、やがて目覚めて現実に戻る…そんな雰囲気でしょうか。



1stアルバム「わ・を・ん」も名曲揃いの超名盤なので、detune.の世界に触れるならこちらも是非!
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