20世紀ファミコン少年

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なんと、ファミコン初期のハドソン黄金期にて多数の楽曲を担当された国本氏から、氏がファミコン音源に落とす前の楽曲を収録した2枚組CDを戴いてしまいました!!
本日、そのCDが届きましたので、早速聴いてみました。 これらの楽曲は、ファミコン音源ではなく、なんとMSXヤマハミュージックコンポーザ+FM音源というレアな機種で鳴らしています。 この音源は、MSXFM音源として有名なOPLL(FM-PACに搭載され、後に「MSX-MUSIC」という名称で標準オプションとなった音源)ではなく、X1,X68Kアーケードゲームに採用されたOPMという音源なんです。(なんか、この音源専用のMDXDRVがあるという噂を聞いたことがありますが…) ただ、今回の楽曲に関しては作曲及びファミコン音源に落とす為のデータリング段階のものと思われますので、恐らく音色はプリセット音色だと思います。 ただ、実際に聴いてみると、OPMのはずなのに物凄くOPLLっぽい音がするんですよね。 もしかして、この音源のプリセット音色をベースにOPLLのプリセット音色が作られたのかな…なんて想像してみたり。
…いつもの癖でついつい音源の話が過ぎました。 すんません。m(_ _)m
今回注目したいのは音源ではなくてですね、やはりその楽曲なんですよ。 このCDには、実際にゲームで使われたデータの元になったバージョンと、その過程で作られた未使用曲が多数収録されています。 ゲームに使われたバージョンは、一部のメロディに微妙な違いがあったり、調が違う曲が数曲あるんですけど、音色こそ違うものの、その楽曲はほぼファミコンで鳴っているバージョンと変わりません。 むしろ興味深いのは、NGテイクとなったバージョンです。 特に興味深いのが、スターソルジャーのメインテーマのNGテイク。 この曲に関して、国本氏はご自身のブログで難産だったことを回顧されてましたが、最初のテイクと思われる楽曲は、確かに国本氏らしい楽曲ではあるものの、全くスターソルジャーの楽曲の雰囲気がしません。 別ゲームのBGMに使われていてもおかしくないような曲ですが、スターソルジャーのイメージとはかなりかけ離れた楽曲になっています。 しかし、テイクを重ねるごとに曲調が変わっていき、4テイク目で実際のスターソルジャーの楽曲に近づき、そして実際にゲーム中で使われる楽曲となっていく様子が聴いてとれると共に、その苦労がしのばれます。
実は、このCDには他の作曲者が作った楽曲も(FM音源版として)収録されているのですが(コンバート用のMIDIデータ作成の為でしょうか…)、国本氏の楽曲はその中でも明らかにソレとわかるような個性を感じるんですよ。 1つは、音がホップするような感じ。 特に、ベースラインが大きく高低を繰り返すような曲は正に真骨頂といった感があります。 コレを聴いて思い出したのが、高校の頃に図書室で読んだ、芥川也寸志氏の「音楽の基礎」という本です。 この本は、音楽の解体新書とも呼べるような内容になってるんですが、最初の方に出てくる文章に、こんな事がかいてあったんです。(うろ覚えなので間違ってたらスミマセン)「音階が変わるにはエネルギーが必要で、高低の激しい音階に移動するにはその分大きなエネルギーが必要である。 そのエネルギーが大きいほど、聴く者に感動を与える」 国本氏の楽曲の大きな特徴であるこのベースラインこそ、まさにコレが当てはまるんじゃないだろうか、と思ったわけです。 そしてもう1つは、長音(2分音符以上の音)の末尾に入る細かい音の動きです。 このあたりは、ある意味3音という制約のあるファミコン音源ならではというテクニックだと思うんですが、少しでも隙間があれば細かく動き回るそれらの音は、ファミコンの音の少なさを全く感じさせません。 で、少し話を戻すと、NGテイクの楽曲は、これらの特徴(特に後者)が顕著に表れているような気がするんですよ。 もしかしたら、音が細かすぎてデータ領域が足りないとかファミコンで表現できないからボツになったんじゃないかと思わず勘ぐってしまうほどです。(^^;)
…それはともかく、国本氏の楽曲は、まさに当時のハドソン、しいてはファミコンの楽曲のイメージそのものだと感じました。 国本氏の楽曲の特徴である音が生き生きと動く作風は、画面を所狭しと動き回るゲームのキャラクターとシンクロし、それは感覚的にゲームそのものの「楽しさ」を構成する重要な要素であったように思えます。 今までゲームミュージック界において作曲者として表に名前が出ることはほとんど無かったものの、国本氏は間違いなく当時のファミコンミュージックの一時代を築いた偉大な方です。 今聴いても素晴らしいこれらの楽曲は、単なる懐古趣味だけではなく、今こそ改めて再評価されるべきだと感じました。
最後に…ゲームミュージック界の重鎮である古代祐三氏の80年代末期頃の流麗なメロディラインが映える楽曲を、ファンは「ポップンロール」と読んでましたが、国本氏の楽曲は、ホップするベースライン+後半でロールするメロディということで、親しみを込めて「ホップンロール(Hop'n'Roll)」と勝手に名づけたい気分ですが如何でしょう…??(^^;)