PC園児

http://kinokosan.blog.ocn.ne.jp/wakame/2006/11/cdpc_abdf.html
というわけで、20世紀ファミコン少年に続く、元ハドソンのコンポーザーである国本氏の秘蔵音源集第2弾「PC園児」が遂に届きましたよ!!
国本氏といえば、ファミコン時代に「チャレンジャー」「スターソルジャー」「迷宮組曲」などの数々の名曲を残しておられますが、今回のCDはPC-Engine時代に作曲なさったゲームミュージックのプロトタイプ楽曲集です。 「PC園児」=「PC-Engine」をもじったものなんでしょうけど…なんで「少年」から更に若返ってるんでしょう??(w
さて、CD内容ですが、まず音源は前作「20世紀ファミコン少年」と同じく、YAMAHAMSX用OPM音源「SFG-01」が中心となっていますが、今作はPC-Engineで発音数が増えたせいか、曲によってはリズムマシン「RX11」を同期させたものや「DX7」を補助的に使ったもの、更にはボーナストラックでヴォーカル入り(!)バンドアレンジバージョンまで聴けてしまいます。 前作「20世紀〜」では、SFG-01はあくまでファミコンのデータリング用シーケンスとしての役割が中心で、音色はほぼ同じようなものが多かったのですが、PC-Engineでは波形メモリで音色がある程度自由に変えれることから、PC園児収録のプロトタイプの段階から、ある程度PC-Engineの音色を想定した音色選びが行われている印象はあります。 つまり、このCD単体でも「音源差し替えバージョン」としての楽曲が存分に楽しめるわけですよ奥さん!!
…例によって音源の話が暴走してしまいましたが(^^;)、楽曲は主に「カトちゃん&ケンちゃん」「ビクトリーラン」「遊遊人生」「ビリヤード(未発表ゲーム)」「桃太郎伝説」(国本氏作曲の2曲のみ)が収録されており、前述のボーナストラックとして、「ネクタリス」の没曲、「ミッキーマウス」「チャレンジャー」のバンドアレンジ曲、「忍者ハットリ君」のシンセバージョンが収録されています。 前作のように、1つの楽曲でプロトタイプパターンがいくつもあるというわけではありませんが、未発表の没ゲームの楽曲が聴けたり、バンドバージョンが聴けるのがなかなか面白いと思います。
まず、「カトちゃん&ケンちゃん」。 当時PC-Engineは所有していなかったので、今回収録のゲームで実はプレイしたこと無いものが多いのですが(^^;)、この「カトケン」はいとこの家にあったので、何度か遊んだことがありました。 というわけで、メロディも聞き覚えのあるものばかり。 聴いた瞬間、「あー、これこれ!」と記憶が蘇ってきましたよ。 今回のCDのライナーノーツ(ごろんた氏寄稿)に「心と記憶に残る曲」という言葉があるんですが、まさにそうです。 メロディ聴いた瞬間にやっぱり思い出すんですよ。 昨今のゲームミュージックは音楽が後手にまわっているものが多い中、これはやっぱり凄い事だな、と再確認。 さて、楽曲ですが…バラエティに富んでいて個人的にはこのCDの収録ゲームの中では特に出色の出来だと感じます。 地上BGMの軽快でちょっとヌケてるコミカルな感じは、まさにカトケンのイメージそのもの。 こういったコミカルなものがあるかと思えば、地下BGMなどでは渋い一面を見せます。 元々国本氏は「チャレンジャー」などでみられるような場面に合わせて多彩に変化する楽曲も魅力だと感じているので、このギャップがまた良いですね。 また、カトケンの楽曲ではいくつか有名な曲をモチーフに作られている楽曲があり、聴いてると思わずニヤリとしてしまいます。(これも国本氏の持ち味の1つですね) あと、楽曲によってはベースやサブメロの最後がロールする独特の癖も見られ、これがテンションを高める要因にもなっている気がします。 まさに国本氏の真骨頂といったところでしょうか。 …楽曲自体とは関係ないんですけど、SFG-01のスネアドラムってFM-PAC(MSX-MUSIC)のポコポコドラムっぽい音がするなぁ…もしかして、OPLLのドラム音の元ネタってコレなんでしょうか?>詳しい方
続いて「ビクトリーラン」。 こちらは、印象としては、「スターソルジャー」「ヘクター'87」などのちょっと攻撃的でストイックな印象に近い楽曲が多い感じです。(その反面、抜けるような明るい曲もあったりするんですが^^;) プロトタイプ版では、このあたりからリズムマシーンによるドラムが入ってきたりして、データリングにも変化が見られます。 曲調は明らかに国本氏によるものとわかるものですが、曲によっては、出だしはメロディ+ベース+リズムのみ→途中でハーモニー等が絡んでくるといった展開があったりして、PC-Engineで発音数が増えたことによって、編曲に余裕が出てきた印象があります。(あと、データリングの段階でメロディを2音にして片方をディレイパートにした曲が見受けられるのも大きな変化かもしれません)
お次は「遊遊人生」。 こちらはゲームをプレイしたことが無いので内容がわからないのですが(^^;)、どちらかというと明るく軽快な曲が多いです。 また、ちょっとJazzyというかSwingっぽい感じの曲が中心ですね。 特に、リズム隊(キック・スネア・ハットの絶妙なタイミング)にセンスを感じます。
そして、これぞ秘蔵音源! 未発売ゲーム「ビリヤード(仮)」です。 こちらは「遊遊人生」のJazzyなイメージ+ストイックな楽曲といった感じで、全体的に渋めのトーンです。 ウッドベースを意識したと思われるベースラインと、リズム隊のハマり具合が絶妙です。 いいなぁ、コレ。 PC-Engine音源版も聴いてみたいところですが…流石に残ってないですかね。 また、Tr.51はメロディが打ち込みではなく手弾きだそうです。 音源も、QX3, TX802, DX7, RX11 とちょっと豪華な感じ。 重いベースラインとコードに乗せて、アドリブっぽいメロディが哀しく響きます。 テープ録音のせいか、音がブレているのが非常に惜しいです。 かなり好きな曲なので、もっと良い音質で聴いてみたいところです。
次に、ファミコン時代の楽曲ですが、「桃太郎伝説」から「村祭り」と「レベルアップ」のプロトタイプ版。 「村祭り」って、こうしてこのCDと一緒に聴くと、カトケンの「地上」BGMと印象がかなり似てますね。 ある意味、カトケンのベースとなった楽曲といった感があります。
残りはボーナストラック。 まずは「ネクタリス」の没曲だそうです。 これまた「ビリヤード」の最終トラックと同様にマイナーで重い印象のある楽曲です。 この時期の国本氏の作風なんでしょうか…それとも、そういう心境だったのかなぁ。(あまり深くは詮索しませんが^^;) 重厚なベースに乗っているコードがアルペジオ的に広がっていく感じが宇宙っぽい広がりを感じさせて良いです。 個人的にはこういうマイナーな楽曲は大好きです。 いいなぁ、コレ。 
そして、次は「ミッキーマウス」のバンドアレンジ曲。 軽快なメロディが心地よいインスト曲…と思いきや、途中でいきなりブレイクして重なっていく謎のヴォーカル。(w 思わず噴いてしまいました。(^^;) あと、楽曲につけられたタイトルも謎です。 ネタバレもナンなので、敢えて詳細は書きません。 興味を持たれた方は是非CDで聴いてみてください。(^^;)
更には、「チャレンジャー」のアレンジが2曲。 浮遊感のあるタマオ氏(国本氏が以前組んでいたバンド「星観る人」のヴォーカルの方)のヴォーカルが印象的です。 まずは、2面のアレンジなんですが…この曲、曲名と歌詞、そしてオリジナルには無い後半のメロディ展開が秀逸です。 よく知っている曲かつあまり今までアレンジされていない曲だったので、「こうなるのか!」と目から鱗状態ですよ旦那! コレもいいなぁ。 もう1曲はプログレしてるなぁ。 変拍子に乗せて雷雲の中を呪文を唱えながら登っていくようなヴォーカルが不思議な曲です。 終盤のシンセソロも聴きどころです。 …ところで、この曲って原曲は「デンジャー」ですかね…? えらい大胆なアレンジなので最初わかりませんでした。(^^;)
最後は、忍者ハットリ君のROUND UPです。 これまた複数シンセで大胆にアレンジしてあります。 メロディは手弾きのようで、ピッチベンド全開です。 これもテープ音源のため、音が揺れているのが残念。 良い音で聴いてみたかったです。

というわけで、国本氏の多彩かつ多才で色々な面が堪能できる1枚となっています。 国本さん、本当にご馳走様でした。m(_ _)m