「世界樹の迷宮」オリジナル・サウンドトラック/古代祐三

「世界樹の迷宮」オリジナル・サウンドトラック ~ ゲーム・ミュージック (アーティスト), 古代祐三


というわけで、ずっと楽しみにしていたコレが遂に届きました! 作曲・編曲は、80年代のパソコンにおけるゲームミュージックの礎を築いた古代祐三氏によるものです。 しかも、開発途上版を聴いた感じ、古代氏の初期作品「ソーサリアン」を彷彿とさせる物悲しいメロディと音色。 ゲームミュージック好きとして、コレは外せません。
早速開封してみたのですが…ディスク2枚組?? よく見ると、NDS音源版に加え、PC-88音源版なるディスクが!! そうです。 NDS内蔵音源はサンプリングレートが低いようでかなり音が割れるのですが、DISC2ではNDS音源に変換する前のオリジナル音が楽しめるわけですよ奥さん!!
はやる気持ちを抑えつつ、CDを聴いてみました。 正直、プロトタイプの段階では、曲調までもある意味「ソーサリアン・クローン」的なものになるかと思っていたのですが、その予想は良い意味で裏切られました。 メロディラインや音色こそ古代氏の色が強く出ているものの、多くの曲はポップスやロックよりもクラシック音楽がベースになっているように思えます。(それが故に、ソーサリアンなど昔のままの曲調を期待していると違和感を感じる人もいるかもしれませんが…) Falcom時代の古代氏の楽曲は、当時としては多彩な曲調であったものの、ある意味「お約束」的な部分は強く感じました。(ある程度「この場面にはこのパターン」と曲調を予想できる) 恐らく、ファンやメーカーからそのような曲調を期待されていた部分が強く、それである時期からメーカーを離れ、様々な曲調を試行するようになったのではないかと思います。 そして今、一回りして20年前の色を残した楽曲作成となったのですが、そこにはしっかり20年分の音楽的蓄積が上乗せされていたんです。 音色こそちょっと聴いた感じは懐かしいものの、20年前と比べると、奏でられる音楽はより多彩で繊細、そしてドラマチックに進化していました。 まさに、20年分の重みを感じる楽曲群でした。
また、プロトタイプ版では全てFM音源の音色だけ、かつ発音数限定で作られていた曲もありましたが、実際に使われた楽曲ではその制約を脱し、ドラムはPCM、かつFM音源の発音数も当時の音源よりも多い曲があります。 その為、メリハリのあるドラムや複雑な和音構成が楽曲により深みを与えている感じです。 複雑な和音構成という部分では、例えば「戦場 散るもかなり(隠しボスバトル)」などがそうでしょう。 この曲は古代氏のお気に入りで、没になりかけたのをなんとか入れてもらったとか。 この曲に関しては、FM音源マニアックスに入っていた曲に近い部分がありますね。 FM音源マニアックスの曲は一聴してかなりアヴァンギャルドな雰囲気でしたが、和音構成といい怒涛のFM音+PCMドラムという音源構成といい、今考えるとこの曲は「世界樹の迷宮」の楽曲を示唆していたように思えます。(時期的に世界樹の開発をしていてもおかしくないので) そして、今回の楽曲のベースになっているクラシック音楽(オーケストラ)物は、十数年前から「アクトレイザー」「カルドセプト」等で聴けたわけですが、聴いた当時は正直、古代祐三氏のそれまでのイメージと違っていてかなり戸惑いました。 しかし、ここへきて改めて世界樹の音楽を聴くと、全てつながってるんだなぁ…と納得。
あと、NDS版とPC-88版の違いについて触れておきたいと思います。 NDS版は、NDSコンバート後の音源を収録しているようですが、やはりNDSの音源性能からか音割れが結構しています。 また、PCMドラムが若干浮いて聴こえる気がします。(逆にこういうのがいいって人もいるので、一概に悪いとは言えないのですが…^^;) それに対し、PC-88音源版は、バランスがバッチシです。(こちらがオリジナルだからある意味当然ですが) ドラムが浮いた感じが無くなり、FM音源の音色は滑らかかつ艶やかで、聴いている間は至福のひと時…素晴らしいです。
欲をいえば、(ゲームのイメージ上敢えて外したのだと思いますが)今回のアルバムでは古代氏の昔の作風の1つ「ポップンロール」風味の曲があまりありません。 FM音源で怒涛の転がりを見せるメロディ(ソロパート)やバッキングをもう一度聴いてみたいと思うのは恐らく私だけではないと思うのですが…こちらは次回作以降に是非期待したいところです。 しかし、総合評価としては超オススメです。 昔からの古代ファンも今のゲームミュージックファンも、そしてFalcom時代のFM音源(古代音色)に惚れた人には絶対に聴いて欲しいアルバムです。