土星マンション/岩岡ヒサエ

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久々に今お気に入りの漫画レビューをば。 今回は岩岡ヒサエ先生の「土星マンション」です。
この漫画、実はリアルタイムで読んでいたわけではなく、岩岡先生の漫画もごく最近知ったばかりだったりします。 きっかけは、元々私が好きな「放浪息子」を連載している志村貴子先生のブログで岩岡先生の漫画「オトノハコ」が紹介されたこと。 実は私も大昔に合唱部をちょっとだけ経験したことがあるんで、なんか妙に気になって。 …なんだけど、なかなかこの本が売ってない! 半分忘れかけてた頃、たまたま旅行先でこの本を見つけて即購入。 帰りの電車で読んでドはまりしちまいました。 ストーリーや登場キャラが色々昔の自分とダブる部分があったりするので、余計にそう感じたのかもしれない。
合唱部(大学でもちょっとだけかじってるんですが、ここでは中学の頃の話)っても正規メンバーじゃなくて、当時の合唱部が人数足りなくてコンクール出られない!って事で、私を含む数名が男声パートのヘルプとしてコンクールまでの約束でやってたんですね…というわけで、なんかシチュエーションも当時とダブって見えたりして。 あと、この漫画の中で強烈な個性を放っている「部長」がこれまた(合唱部じゃないけど)高校の頃のコンピュータ部の部長にもークリソツでw メガネかけてるし、人を威嚇するときの「キシャー」って雰囲気なんかまさに瓜二つなんですよ。(部長さんスミマセン)

…なんか話が逸れましたが、本題の「土星マンション」について。 こちらは岩岡先生が現在IKKIで連載している漫画です。(IKKIはリアルタイムでは読んでないので単行本で読んでます) 超大雑把なあらすじは以下のような感じ。


地上全体が自然保護区域となり、地上に降りることが許されなくなった近未来の地球で、地上35,000メートルで土星の輪のように地球を取り巻くリングシステム(マンション)が舞台。 その中は所得によって住む地域が上層・中層・下層に分かれており、下層に住む少年「ミツ」がリングシステムの窓拭きの仕事を通じて様々な仲間と触れ合い、成長していく物語。 ミツの父親「アキ」は幼いミツに地上への憧憬を語っていたが、その直後に窓拭き中の事故で行方不明(地上に落下)。 初仕事で吸い込まれそうな地上の美しさを目の当たりにしたミツは、いつしか父親が降り立った場所を探しに地上へ降りたいと決意する。
ストーリーの本筋は人と触れ合うことによるミツの成長を描いているのですが、それ以上に面白いのが主人公以外のキャラの掛け合い。 主人公が喋ってる時も後ろでいちいち大げさに動いたりするのがコミカルに表現されていて、そういう細かい情報とかビジュアルによって、どの登場人物もキャラが立ってるんですよね。(むしろ、主人公の「ミツ」が割と普通(発展途上)なキャラに設定されているので、他のキャラが立って見えるのかも…) 多くの漫画は、主人公達の会話シーンを引き立たせるべく重要なシーンではその他のキャラを動かさないことが多いんですが、この漫画の場合は重要なシーンでも割と他のキャラが会話を邪魔したりなんかして。(^^;) しかし、そういうのは日常生活では普通だし、そういう事をさせることによって、キャラクターを印象付けている感があります。 「土星マンション」に出てくるキャラは、決して主人公を引き立たせるだけの「背景」ではなく「独立した意思を持って干渉してくるその世界の住人」なんです。 だからこそ面白い。 どのキャラも妙に人間くさくて親しみを感じるのは、そういう部分も大きいんだと思います。 過去の岩岡先生の漫画でもそういう表現は随所に見られましたが、長編漫画の「土星マンション」ではそれが完成しつつあるように思えます。(個人的には「春子さん外伝」とか是非見てみたいなぁ) ちなみに、普段はコミカルでも、ストーリーの本筋はシリアスな部分も多く、要所要所で泣かせてくれるのもたまりません。 こういう部分は、私が他に好きな漫画「ふたつのスピカ」とかにも通じるところがあるかもしれない。
長編といえば、この漫画では過去の漫画よりも伏線が沢山出てきますね。 以前の話に出てきた何気ない会話や挙動が、実はその後の展開に大きく関わってくることが多く、改めて単行本で過去の話から読み返すと「あの時実は!」って箇所が色々あったりしてまた面白いんですよ。 実を云うと、私の場合は書籍や漫画ってあんまり何度も読んだりしないんですけど、「土星マンション」は読むたびにそういう発見があって面白いです。 先日、最新の4巻が発売されたんですが、この巻では今までの伏線が色々な形になって現れてきて、5巻以降の大きな展開を予感させます。 続きが楽しみ!
あと、これだけはどうしても外せません。 岩岡先生の描く絵って、素朴な感じがして大好きなんですよ。 いわゆる「萌え」とか洗練された流麗な描線とも違う。 なんか素朴な感じがいいんです。 例えるなら、流麗な線の漫画をガラスの器としたら、岩岡先生の描くのは土器のような素朴な味わいがあります。 決して流行りの絵じゃないけど、見ているだけで何となくほっこりするあの感じは唯一無二のものではないでしょうか。

そんなわけで色々と魅力を書いてきましたが、実は今、啓文堂書店でフェアをやってまして、ここで「土星マンション」を買うと、岩岡先生特製のフリーペーパーとブックカバーがついてきます。 私も入手したんですが、フリーペーパーに載ってる裏話4コマの2つ目で豪快に噴いたw このフェアは2月末までだそうですので、読み始めるなら今しかない! 皆様も是非、ということで。